2026年6月11日
【税理士が解説】安易な法人化はリスクを伴う?法人成りのデメリット5選

「法人化すると節税になる」「社会的信用が上がる」——一度法人化を検討すると、左記のような良い部分ばかりに目が行きがちですが、その裏にある負担やコストについてはあまり語られません。
メリットだけを見て形だけ法人化してしまうと、かえって個人事業主時代より手元のお金が減ってしまうケースもあります。本記事では、法人成りで生じる主なデメリット5つを税理士の視点から解説します。
目次
赤字でも毎年かかる「法人住民税の均等割」
社会保険への強制加入と保険料負担の増加
役員報酬は一度決めたら1年間変更できない
個人の確定申告より重くなる事務負担
法人をやめる(解散・清算)ときの手間とコスト
1. 赤字でも毎年かかる「法人住民税の均等割」
個人事業主は赤字なら住民税(所得割)はかかりません。ところが法人の場合、たとえ売上ゼロの赤字決算であっても、「その地域に会社が存在している」こと自体に対して毎年税金がかかります。これが「法人住民税の均等割」です。
資本金1,000万円以下・従業員50人以下の中小法人であれば、年間最低約7万円(都道府県民税+市区町村民税の合計)が固定コストとして発生します。金額は自治体によって若干異 なりますが、業績に関係なく毎年確実にかかる出費として資金繰りに織り込んでおく必要があります。
2. 社会保険への強制加入と保険料負担の増加
法人を設立すると、社長1人の会社であっても社会保険(健康保険・厚生年金)への加入が法律で義務づけられます。
個人事業主が加入する国民健康保険・国民年金と異なり、社会保険料は会社と個人が折半で負担します。役員報酬の総額に対する保険料は労使合計で約30%(それぞれ約15%ずつ)にのぼり、会社側の負担は法定福利費として毎月かかり続けます。
● 2026年以降はさらに負担が増える
2026年4月から、少子化対策の財源として「子ども・子育て支援金」が健康保険料に上乗せされる形で徴収されます。労使折半での新たな負担となるため、法人の保険料負担は実質的に増加傾向にあります。
所得税・法人税で節税できても、社会保険料の会社負担分がそれを上回り、トータルの手残りが減るケースは少なくありません。法人化の前後でキャッシュフロー全体を試算しておくことが不可欠です。
3. 役員報酬は一度決めたら1年間変更できない
個人事業主であれば、事業口座から生活費としていくら引き出しても税務上の問題はなく、月々の売上に合わせて自分の手取りを柔軟に調整できます。
一方で法人の場合、社長自身の給与である「役員報酬」は、税法上のルールによって制約されています。
原則として、事業年度の開始から3ヶ月以内に金額を決定し、その後は1年間毎月同額で支払い続ける必要があります。業績が好調だからと途中で増額したり、資金繰りが悪化したからと減額したりすると、変更分が会社の経費として認められなくなるリスクがあります。
利益の予測が立てにくい事業や、収入に季節的な波がある業種では、この制約が経営の柔軟性を狭める大きな要因になり得ます。
4. 個人の確定申告より重くなる事務負担
法人の決算・税務申告は、個人の確定申告と比べて提出書類の種類が多く、記入ルールも複雑です。勘定科目内訳書や法人税の各種別表など、個人では不要だった書類が多数加わります。
取引が少なければ自力で対応することも不可能ではありませんが、仕訳の正確性や税法上の特例 を正しく適用するには、相応の時間と知識が必要です。自分でやれば「書類作成の時間」がかかり、専門家に任せれば「税理士費用」が発生する——どちらにしても、個人事業主時代にはなかったコストが生まれます。
5. 法人をやめる(解散・清算)ときの手間とコスト
「やってみたけど合わなかった」と感じても、法人を畳むのはそう簡単ではありません。
個人事業の廃業は税務署などへの届出だけで完了しますが、法人の解散・清算には法律で定められた手続きが多くあります。官報への解散公告の掲載、最低2ヶ月の待機期間、残余財産の確定、清算確定申告など、やめる意思決定をした後にも煩雑な手続きをこなす必要があります。
費用面では、解散・清算の登記に伴う登録免許税や官報掲載費用だけで実費約7〜8万円かかり、司法書士や税理士など専門家への依頼 費用が更にかかってきます。
「合わなければすぐ個人に戻せばいい」というわけにはいかない——この「出口のハードルの高さ」については、設立時に最も見落とされやすいポイントです。
まとめ
法人成りは、節税効果や信用力という大きなリターンがある一方、均等割・社会保険料・事務負担・撤退コストという継続的なコストを背負うことになります。
「形式的に法人化したのに、かえってキャッシュが残らなくなった」という事態を防ぐには、数字に裏付けられた事前のシミュレーションが欠かせません。
当事務所では、メリット・デメリット両面を公平に評価した上で、法人成りが本当にプラ スに働くかを診断しています。少しでも迷いがあれば、まずはお気軽にご相談ください。
