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【税理士が解説】法人設立後、役員報酬を決めるときの検討ポイント

2026年6月3日

【税理士が解説】法人設立後、役員報酬を決めるときの検討ポイント

法人を設立した後、速やかに決定しなければならない重要事項のひとつが「役員報酬(社長自身の給与)」の金額です。

個人事業主のときとは異なり、法人の役員報酬は期の途中で自由に変更することはできません。税務上のルールを正しく理解せず、安易に金額を設定してしまうと、税務調査で経費(損金)として認められず、予期せぬ課税処分を受けるリスクがあります。

本記事では、法人設立後に役員報酬を決める際、実務上必ず押さえておくべき4つの検討ポイントを解説します。

目次

  1. 「定期同額給与」の原則:3ヶ月以内の決定と1年間の変更制限

  2. 「法人」と「個人」のトータル税コストの最適化

  3. 法人負担分を含めた「社会保険料」の影響

  4. 適切な金額を設定するための実務的アプローチ

1. 「定期同額給与」の原則:3ヶ月以内の決定と1年間の変更制限

役員報酬の最も重要な税務ルールが、「定期同額給与(ていきどうがくきゅうよ)」です。

  • 法人設立から「3ヶ月以内」に金額を決定しなければならない

  • 一度決定した金額は、その事業年度が終了するまで毎月同額を支給しなければならない

これが大前提となります。

期中での臨機応変な変更が認められないのは、会社の利益が出そうなときに急に役員報酬を増やし、法人税を意図的に減少させる行為(利益調整)を防ぐためです。

もし年度の途中で役員報酬の額を改定した場合、原則として「増額した部分、あるいは変更前後の差額分は法人の経費(損金)として認められない」ことになります。それにもかかわらず、受け取った個人側では所得税・住民税が課税されるため、会社と個人の双方で二重に税負担が生じることになります。

なお、役員の職務内容に重大な変更が生じた場合など「臨時改定事由」に該当するケースでは、期中であっても改定が認められる例外規定があります。該当するかどうかは税理士に確認することをお勧めします。

2. 「法人」と「個人」のトータル税コストの最適化

役員報酬を決める際、「会社の利益をゼロにすれば法人税がかからないため、見込める利益をすべて役員報酬に回すべきだ」という考え方は必ずしも正しくありません。

役員報酬を増やすと法人の課税所得は減り法人税は下がりますが、その分、社長個人の「所得税」「住民税」、そして後述する「社会保険料」が跳ね上がるためです。

個人の所得税は、所得が高くなるほど税率が上がる「超過累進税率(最高税率45%)」が適用されます。一方で、中小法人の法人税率は所得800万円以下の部分が15%、超える部分が23.2%(地方税等を含めた実効税率でも約21%〜34%)でほぼ一定です。

● 役員報酬が高すぎる場合

法人税は減りますが、個人の所得税・住民税・社会保険料の負担が上回り、トータルの手残りが減ることがあります。

● 役員報酬が低すぎる場合

個人の税負担は抑えられますが、会社に利益が残りすぎて法人税の負担が重くなります。

したがって、「法人税+個人の所得税・住民税+社会保険料」の合計額が最も低くなる最適なバランスを試算することが必要不可欠です。

3. 法人負担分を含めた「社会保険料」の影響

税金以上に会社のキャッシュフローに直接的な影響を与えるのが、社会保険料(健康保険・厚生年金)の負担です。

法人化した場合、社長1人の会社であっても社会保険への加入が法律で義務づけられています。社会保険料の総額は、おおむね役員報酬(標準報酬月額)の約30%に達します。この金額を会社と個人で約15%ずつ折半して負担することになります。

● 試算例:役員報酬を毎月50万円に設定した場合

毎月の社会保険料は、会社負担分と個人負担分を合わせて約15万円(年間約180万円)になります。会社負担分は経費になりますが、毎月確実に現金が引き落とされるため、新設法人の資金繰りを圧迫する要因となります。設定前に必ず月次のキャッシュフローを確認しておきましょう。

4. 適切な金額を設定するための実務的アプローチ

これらを踏まえ、実務上は以下のステップで役員報酬の額を決定していきます。

● ステップ1:個人の必要最低限の生活費・固定費の算出

一度設定すると1年間変更できないリスクを考慮し、住居費や生活費、ローン返済などが確実に賄える最低限の金額をベースラインとします。

● ステップ2:現実的な事業計画(売上・経費予測)の策定

不確定な売上を見込むのではなく、確実性の高い予測をもとに、仕入れや固定費を差し引いた「役員報酬支払い前の法人利益」を算出します。

● ステップ3:迷った場合は「やや低め」に設定する

役員報酬を高く設定しすぎて法人の資金がショートする事態は避けなければなりません。初年度はやや低めに設定し、会社にお金を残す方が安全です。残った利益は翌期以降に業績を見極めながら改定するか、事前に税務署へ届け出る「事前確定届出給与」の制度を利用して役員賞与として支給する方法も検討できます。

まとめ

役員報酬の決定は、単なる手続きではなく、法人の財務健全性と節税効果を左右するとても重要な項目です。

会社の業種、今後の事業計画、役員の家族構成などによって、最適な役員報酬の額は個別に異なります。設立から3ヶ月の決定期限を過ぎる前に、一度専門家にご相談ください。実際の数字をもとに、最適なシミュレーションを行うことをお勧めいたします。

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